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JB Press 2013.05.02(木) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37700
中国:ソフトパワーはカネで買えない
(英エコノミスト誌 2013年4月27日号)
中国の経済力はアジア地域における中国の人気にあまり貢献していない。
中国の需要の影響力は今、アジアの隅々に及んでいる。
インドネシアの人里離れた村にある場違いなほど豪華な燕小屋は、中華料理のスープ用に燕の巣を供給している。
シンガポールのカジノには中国人が集い、インドの養鶏場は今、以前は廃棄していた鶏の足の市場を見つけた。
オーストラリアのピルバラとモンゴルのゴビでは、巨大な鉱山が開発されている。
アジア地域にとって、中国は市場としてのみならず、輸出国、投資家、建設業者、そして政府の寛大な支援の源泉としても重要なのだ。
■過去20年間で最悪の関係
しかし、中国の経済力と中国経済が地域に及ぼす数々の好影響は、外交上の優位性をもたらさなかった。
実際、中国と地域の関係はこの20年間で最悪の状態にある。
対日関係は係争中の尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡り、極めて緊迫した状態が続いているため、武力衝突の可能性も決して否めない。
東南アジアでは、南シナ海での紛争を巡って関係が悪化した。
20年かけて中国との友好関係を強化してきたミャンマーは今、対中依存を減らすために西側に傾いている。
インドとの関係は、商業関係の急拡大にもかかわらず、依然として相互不信が際立つ。
問題の一部は、これだけの経済大国であれば恐らく必ず持たれてしまう妬みと反感だ。
また、中国が事業を進めるやり方にも問題がある。
例えば、大規模な建設プロジェクトで、多くの場合、周囲とは切り離された暮らしを送る大勢の中国人作業者を使う行為などがそうだ。
中国のビジネスマン、政府関係者、旅行者の一部は、高圧的で横柄だという残念な評判を得ている。
しかし、中国の評判の悪さの根源は、その経済力や企業、個人の行動とはほとんど関係がない。
オーストラリア、インド、インドネシア、日本、マレーシア、韓国その他多くの国々にとって、中国は唯一最大の輸入相手国だ。
これがもたらす莫大な恩恵は看過されがちだ。価格を引き下げ、かつて高級品だったモノに手が届くようにすることで生活水準を高めてくれたと言って、中国を称賛する人は多くない。
むしろ、中国からの輸入品は批判を呼ぶ。
国から補助を受けた中国企業と現地企業の競争は不当だと見なされるからだ。
中国が貿易を政治的な武器として用いることを厭わない姿勢を示したことで、状況はさらに悪くなった。
●.2010年に起きた尖閣諸島を巡る危機のピーク時に、中国がレアアースの対日輸出を停止した未公表だが効果的な措置は、
他のレアアース鉱山の経済的な可能性を新たに調査するきっかけを作った。
●.昨年暮れにかけて尖閣諸島を巡る紛争が再燃し、それに伴って大衆の反日運動、非公式な不買運動、税関手続きを遅らせる嫌がらせが起きると、
日本のメーカーが地理的な多角化を進めるプロセスをさらに加速させることになった。
輸入国としての中国の役割も、世界中から感謝の気持ちを勝ち取っていない。
オーストラリア、インドネシア、日本、韓国、台湾などの国々にとって、中国は最大の輸出先だ。
資本財メーカーは歓声を上げている。
しかし、中国のコモディティー(商品)需要やエネルギー、鉱業プロジェクトに対する投資は、現地で一種の植民地主義と見なされることがある。
ミャンマーのテイン・セイン大統領が取った対応の中で最も支持されたのは恐らく、2011年に中国主導の水力発電ダム建設計画を中止したことだろう。
野党党首のアウン・サン・スーチー氏がこれまでにやったほぼ唯一の不人気なことは、中国の銅山計画の継続を支持すると宣言したことだ。
■地域の疑念を呼ぶ大型建設プロジェクト
同じように、中国の大型建設プロジェクトは決まって大戦略の一環ではないかと疑われる。
最も分かりやすい例が、海軍施設が結ぶ「真珠の首飾り」計画だ。
インドのアナリストらはこれを、中国による戦略的なインド洋包囲網作戦と見なしている。
ミャンマーのチャウピュやスリランカのハンバントタ、パキスタンのグワダル、バングラデシュのチッタゴンで中国が港湾建設に携わってきたのは事実だ。
また中国は実際、いずれこれらの港を海軍の寄港先、あるいは海軍基地として使うことを望んでいるかもしれない。
だが、今のところは、憶測に過ぎない。
政府の援助の活用についても、中国の経済力は意図した効果をもたらせずにいる。
中国は北朝鮮が体制を維持できるようにする燃料を供給しており、北朝鮮国民の一部を飢餓から救う食糧も供給している。
だが、東アジア地域を不安定化させる北朝鮮指導者の核開発計画推進を止められない。
実際、北朝鮮の体制の対中依存を助長することで、中国は事実上、北朝鮮の常套手段である恐喝という外交戦術を容易にしてきた。玄関先に立ち、起爆装置に手をかけた自爆テロ犯のように、北朝鮮は中国に対し、体制崩壊や原始的な捨て身の核兵器使用というリスクを冒して援助を断てるものなら断ってみろと挑めるのだ。
さらに、中国が外交的に我意を通すために援助を有効に使った証拠と考えられているものでさえ、実は判然としない。
昨年7月、東南アジア諸国連合(ASEAN)の年次外相会議が初めて共同声明を採択できなかった時、加盟国は動揺した。
大半の加盟国は、主催国であるカンボジアが中国の命に従い、中国との領有権問題を声明に盛り込もうとしたベトナムとフィリピンの試みを阻止したと批判した。
同年9月、中国はカンボジアに対して5億ドル以上の長期低利融資を行うと発表。
中国がカンボジアの協力をカネで買ったという印象は中国に一定のダメージをもたらした。
たとえ中国が目先の外交目標を達成したとしても、また、もし長期的に、中国が自らのプロパガンダに反し、弱くて従順なASEANを自国の国益と見なすようなら、7月の成功は、それが地域に抱かせた疑念という点で高くついた。
■大国意識
根本的には、この疑念は経済的なものというより政治的なものだ。
懸念されているのは、2010年に中国外相がふと気を許した時に述べた通り、
「中国は大国であり、他国は小国だ。
これはただの事実だ」
ということだ。
近隣諸国が心配しているのは、中国が自国をただの経済大国としてでなく、近隣諸国の行動の自由を制限しようとする政治的な覇権国として見なすことだ。
中国政府はそのような野心を一切否定しており、仮にそんな野望があったとしても、中国は一部のアジア諸国が恐れるほど厳しく自国企業を管理できないかもしれない。
しかし、中国は自分たちの関心が純粋に商業的なものだということを近隣諸国に納得させることができずにいる。
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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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過剰な大国意識がこの国を
「アジア最強のトラブルメーカー」
に仕上げている。
大国は大国になったことによって、腰を低くすべきだろうに、中国は成り上がり的に胸を張って周囲を威圧しようとしている。
「言うことをきかないなら力をもってするぞ!」
と脅す。
アジア諸国は今後、このトラブルメーカーと付き合っていかねばならない現実に身を委ねることになる。
【「悪代官への怒り」】
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