2013年5月11日土曜日

脱中国でミャンマーを目指す日本の中小企業:親日、人口、若さ、識字率etc

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JB Press 2013.05.11(土)  川嶋 諭
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37761

脱中国でミャンマーを目指す日本の中小企業
親日、人口、若さ、高識字率、低犯罪率の5条件揃う

日本をはじめとして各国からの視察団が連日大挙して押し寄せているミャンマーに話は飛ぶ。

■中国から早くこっそり逃げないと脱出できなくなる・・・

 日本が5月の大型連休真っ最中だったとき、ヤンゴンの中心部にあるミャンマーと日本の友好協会でのことだ。
 会議室の片隅で初老の日本人と1人の若いミャンマー人が何やらひそひそ話をしている。
 2人の間にはある製品が置かれている。
 この製品は、日本のメーカーがほぼ100%中国で生産しているものだという。
 「これの生産を全量、一気呵成にミャンマーに切り替えたい。
 ゆっくりやっている時間はない。
 秘密裏に工場を立ち上げたいが、できそうか」
 どのような製品なのかは残念ながら書くことができないが、人件費が安く何より人口が膨大な中国の恩恵を最大限に受けてきたものである。

 「中国は人件費が急速に上がっているし、反日はエスカレートする一方。
 将来のことを考えると今決断するしかない」
 「ぐずぐずして中国政府に勘付かれたら中国から出られなくなってしまう。
 秘密にそして瞬時にことを進めなければならないのです」
 「どこかの週刊誌が『中国は世界の工場』などとあおって、大企業ばかりか調査能力の乏しい中小企業の中国進出を促してきた。
 しかし、中小企業が中国進出でうまくいっているという話はほとんど聞きません。
 青息吐息のところばかりでしょう」
 企業の海外進出を長年サポートしてきたという初老の日本人男性はミャンマーが注目されている理由をこのように話す。

 経済制裁が解除されてまだ日が浅いミャンマーは、インフラの整備も法律の整備もまだこれからである。
 しかし、中国リスクを回避したい日本の企業にとっては、それらが整備されるまで待てないのである。
 ある大手総合商社のヤンゴン駐在所長は
 「とにかく日本企業の視察がすごい。
 経団連をはじめとして関経連、中経連などの経済団体はもちろん、最近目立つのは日本の地方を拠点としている中小企業です」
と話す。
 「彼らは単なる視察ではないんです。
 ミャンマーにすぐにでも進出しようと本気で考えている。
 中小企業のサポートは総合商社としては商売になりにくいのですが、ミャンマーと日本のどちらにもメリットがあることなので、全力でお手伝いさせてもらいますよ」

■ミャンマーが日本人を惹きつける3つの魅力

 日本がミャンマーに魅力を感じる大きな理由は3つある。
①.親日国であること、
②.人口が多いこと、
③.識字率が高いこと。

●.識字率については、例えばタクシーの運転手でも毎日新聞を読み、政治や経済に関心が高いことからもすぐにうかがえる。
●.親日国であるという点は説明の必要は全くないだろう。
 日本の経済協力を受けながら反日教育を続け、
 自分たちが多少豊かになると手のひらを返したように反発する中国や韓国
に痛い目に会わされてきた日本企業にとっては、もはや体に染み付いた反射神経のようなものだ。
●.ミャンマーの人口は隣国タイとほぼ同じ6242万人(2011年、国際通貨基金=IMF調べ)。
 日本の得意な製造業が進出するにも十二分の規模がある。

 隣国タイはこの3つの条件を兼ね備えて日本企業が世界で最も多く進出している国になったが、ミャンマーにはそのタイと同じ第4の条件も兼ね備えている。
④.敬虔な仏教徒で、柔和な国民性であることだ。
⑤.さらに言えば、銃を使った殺人事件がほとんどない点も大きい。
 フィリピンは相変わらずの銃社会だし、隣国タイでも銃が簡単に手に入るので大きなニュースにならない殺人事件はけっこう多い。
 タイのパタヤで投資コンサルティングをしている大石央さんは、
 「先日、パタヤで運転中のロシア人が危険な割り込みをされたのに腹を立て、その車を抜き返したんです。
 そしたら、タイ人が運転するその車がさらに抜き返し、その際にロシア人に向けて銃を発砲、ロシア人は死亡しました。
 似たような事件はたびたび起きているんですよ」
と話す。

 大石さんはミャンマーでも投資コンサルティングを始めているが、
 「ミャンマーでは一般国民に銃が手に入らない点はタイと大きく違う点で、日本人にとってアピール度が高いのではないでしょうか」
と言う。

 経済制裁が解除されて約1年、ミャンマーは日本企業の進出を待つばかりといった様相を呈してきている。
 日本人にとっても、ミャンマー人の日本好きには、単に心地良いだけでなく、何らかのアクションを起こしたくなる気にさせられる。
 ヤンゴンの街に来てまず目につくのは日本車の多さ。
 「メード・イン・ジャパンへの信奉度は、本家本元の日本人よりミャンマー人の方が高いのではないかと思います」
と言うのは、5月にミャンマー初の日系紙「ヤンゴンプレス」を創刊した栗原富雄オーナー編集長だ。
 栗原さんはミャンマーの魅力に惹きつけられて今から3年前にミャンマーへ移り住んだ。
 ミャンマーへの投資コンサルティングをする一方で、まずは情報発信が重要だと考えヤンゴンプレスを創設した。

■90%を超える日本車のシェア

 栗原さんによると、ミャンマーには現在、年間約15万台の中古車が輸入されているが、その大半が日本車だという。
 「ここでは日本車に乗っていることがステータスなんです」。
 先の大手総合商社のヤンゴン駐在所長は言う。
 「ミャンマーでは日本車のシェアが90%を超えていることで分かるように、日本車の人気は圧倒的です。
 それも日本で作られた車を欲しがります。
 タイ生産の日本の新車も輸入されているのですが、日本から輸出される中古車の方が価格が高い場合があるんですよ」
 実はミャンマーは日本とは違う右側通行の国である。
 なのに、走っているのは右ハンドルの日本車ばかり。
 バスやトラックも日本の中古車がほとんどだ。
 バスの場合には左側に乗降口があって危険なので、鉄板などでふさぎ、右側のボディーをくり抜いて新たな乗降口を設けている。
 バスやトラックには、日本で使われていたままの「○○興業」「○○中央交通」などという文字がはっきり残っている。
 これらの文字やデザインも日本製であることの証として、そのまま残して使われているそうだ。
 ミャンマーの生活水準が向上すれば、いずれこのような習慣もなくなってしまい、人々の記憶からも消えてしまうのだろうが、1人の日本人として覚えておきたいと思った。
 ちなみに、ミャンマーは英国の統治下にあったため元々は日本と同じ左側通行だった。
 しかし、英国支配への反発から右側通行に変えたという歴史がある。

 さらに言うと、ミャンマー人の聖地、標高1200メートルにあるゴールデンロックには、山の麓から急峻な坂道を車で登ること1時間かかって辿り着く。
 ここに巡礼に行く人(観光客も)は、日本製のダンプカー荷台に砂利や砂のようにぎゅうぎゅう詰めに載せられる(乗せられる)。
 ダンプカーには「○○廃棄物処理」といった名前がくっきり。
 100%日本の中古ダンプが活躍している。
 乗用車やバスでは登れないようなきつい坂道で、下りの際には排気ブレーキをフル活用しないとダンプのブレーキパッドがもたない。

 このような自動車の例を1つ取っても、親日度は理解できると思う。
 しかも人件費は中国の数分の1。
 人口もタイとほぼ同じで、しかも重要なのは若い人が多いこと。

■日本の上を行く東南アジアの少子高齢化

 日本は少子高齢化で世界の“先進国”と言われるが、
 少子高齢化のスピードでは中国や韓国、シンガポール、タイなどの方が上を行く。
 つまり、そう遠くないうちにアジアのこうした国々は日本以上の高齢国になる。
 脱中国で日本企業がミャンマーを目指すのはそうした事情もある。
 永続的な発展を目指したい企業にとっては、新興国の少子高齢化は大きな問題だからだ。
 20~30年で環境が大きく変化することが確実では、長期視点に立った投資はしにくい。

 実際、今や空前の人手不足が続いているタイでは、ミャンマーやカンボジアなどからの出稼ぎ労働者がいないと経済が回らない状況に陥っている。
 中でも人口が多いミャンマーは最大の供給国となっている。
 「ミャンマーからタイへ出稼ぎに行っている人の数は公式には300万人とされています。
 しかし、実態はその2倍、600万人はいると見られています。
 彼らに帰られては経済発展が止まってしまうので、タイ政府はミャンマー政府にものすごく気を使っています」
 こう話すのは先の大手総合商社のヤンゴン駐在所長。
 「タイが使っている天然ガスの3分の1もミャンマーが供給しているので、両国の関係は極めて良好です」

 ミャンマーでは雨季に当たる6月から11月に米などの農業生産に従事し、12月の乾季に入るとミャンマー内では仕事がなくなるので、タイの建設現場などへ出稼ぎに行く。
 乾季は建設現場が稼ぎ時なので、需要と供給のバランスがうまく取れている。
 「タイへの出稼ぎはミャンマー経済にとっても意味が大きいんです。
 ミャンマーの国内総生産(GDP)は約850ドルですが、出稼ぎ者による送金で外貨が入ってくるので、実質的には1500ドルを超える水準に達していると見ていい」
 「この点を見逃すとミャンマー投資へのタイミングを見誤ると思います。
 確かにインフラ整備も十分ではない。
 法整備もこれからです。
 しかし、実質的な所得水準から、その準備は整ったと見るべきでしょう」

 日本の総合商社のトップが来れば、首相は喜んで時間を取るそうだ。
 駐在所長でも大臣クラスには日々会えるという。
 法律が整備されていない、インフラもまだ。
 だからこそミャンマー政府は大好きな日本に期待する。
 「まだこれからということは、白いキャンパスだと思えばいいんです。
 日本の私たちがサポートしてミャンマーが発展する工程表を書くことができる。
 一から関われるということは、関わった者にもメリットが大きいということです」

■入管を待つ日本の中古車、建設機械・・・

 私もその準備段階をこの目で見るために、ヤンゴンの南25キロのところにあるティラワ港に行ってみた。
 ここでは香港資本の企業が大きな港湾施設を建設しており、その背後には2400ヘクタールに及ぶ経済特区が広がっている。
 ここには日本の三菱商事、住友商事、丸紅が共同で出資、大きな工業団地を作ることが決まっている。
 現在は一面の野原が続くが、今から20年以上も前に見た作られたばかりのタイの工業団地に重なるものがあった。
 「現在はヤンゴン港が中心になっていますが、川の奥にある港なので水位変化の影響をもろに受けてしまい、大型のコンテナ船が入れません。

 ここは海に近く、干潮でも水位は9メートルあり、大型の自動車専用船が停泊することができます」
 「ヤンゴン港では経済制裁を受けてきたときでも扱う荷物量は増え続けてきました。
 それでも大変混み合っている。これ以上の増加には対応できないでしょう」
 こう話すのはティラワ港のミャンマー人経営者である。
 実際、港には世界中の貨物船、コンテナ船が停泊しており、入管を待つ日本の中古車や大型バス、建設機械がずらりと並んでいた。
 現存する港の先にはさらに拡大する予定の土地が広がっている。
 この港を見る限り、ミャンマーが発展する準備は整いつつあるように見えた。




ロイター 2013年 05月 14日 02:44 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTJE94C01K20130513

対ミャンマー海外直接投資、2012/13年度は5倍に拡大

[ヤンゴン 13日 ロイター] 
 13日公表のデータによると、海外からの対ミャンマー直接投資は2012/13年度(2012年4月─13年3月)に前年比およそ5倍に拡大した。
 テイン・セイン大統領が12日の演説で明らかにした内容を13日、国営紙が報じた。

 大統領は「国内外からのミャンマー投資は2012/13年度に約5倍に拡大した」とし、
 「海外から94企業に対し14億1900万ドル以上、国内では65社に対し約13億ドルの資金が投じられ、合計8万2792人の雇用を創出した」
と述べた。

 ミャンマー投資委員会の政府高官がロイターに明らかにしたところによると、2011・12年度の海外投資は11社に対し約3億ドルだった。
 2012/13年度に海外から投資を受けた94社のうち78社は、労働集約型の製造業セクターで、中でも縫製工場に集中しているとしている。

 また中国、香港、日本、韓国、シンガポールからの投資が大半を占めているという。






【「悪代官への怒り」】




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