2013年5月8日水曜日

中国・人民日報論説=日本は沖縄も「強奪した」:「中国に沖縄を返せ」

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●8日、中国・人民日報は尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題の歴史的検証記事を掲載し、「尖閣を含む台湾とそれに属する島しょ部は中国に回帰すべきであり、歴史上結論の出ていない沖縄問題も再び議論が可能だ」とした。写真は沖縄の風景。


サーチナニュース 2013/05/08(水) 12:39
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0508&f=politics_0508_002.shtml

日本は尖閣も沖縄も「強奪した」=中国・人民日報論説

  中国共産党機関紙の人民日報は8日付で、
 「『馬関条約』と釣魚島問題を論じる(釣魚島の問題をきちんと整理する 1)」
と題する署名論説を掲載した。
 同論説は、
★.「尖閣諸島を含む台湾に付属する諸島」、
★.「澎湖諸島」に合わせて、清国政府は沖縄も日本に「奪い取られた」
と主張した。

  同論説は中国社会科学院の学部委員の張海鵬氏と同院中国辺境史地研究センターの研究員を努める李国強氏の連名で発表された。「馬関条約」は日清戦争の講和を決めた「下関条約」の、「釣魚島」や「釣魚島諸島」は尖閣諸島の中国側呼称だ。

  論説は国立国会図書館外交防衛課の浜川今日子氏が発表した論文「尖閣諸島の領有をめぐる論点」(2007年)を部分的に引用し、尖閣諸島は下関条約の結果、台湾に付属する島として日本に割譲されたと主張した。

  ただし、浜川氏論文が多くの資料を根拠として、
 「台湾附属島嶼に尖閣諸島が含まれないことは、日清双方が認識していた」
の結論を出したのに対し、人民日報の論説は、不明瞭な論理で浜川氏論文の一部記載を、自説を裏付ける根拠とした。

  人民日報論説が注目したのは、下関条約の締結に際しての日本・清国のやりとりだ。
 清国側の李経方全権委員は、「日本が後日、福建省付近に散在する島嶼を台湾附属島嶼と主張すること」を懸念し、「台湾所属島嶼に含まれる島嶼の名を目録に挙げる必要はないか」と発言した。

  それに対し、日本の水野弁理公使は、
 「島嶼名を列挙すれば、脱漏したものや、無名の島があった場合、日中いずれにも属さないことになり不都合」、
 「台湾の所属島嶼は海図や地図などにおいて公認されている」
と主張。
 さらに
 「台湾と福建の間にはは澎湖列島の『横はり』があることから、日本政府が日本政府が福建省付近の島嶼を台湾所属島嶼と主張することは決してない」
と説明。
 中国側全権だった李全権委員も納得したという。

  人民日報論説は、水野弁理公使の上記発言を中国語訳・引用した上で、
 「この一点からみても、日本政府は事実上、釣魚島諸島が台湾に付属する島嶼(とうしょ)であると承認していた」
と主張した。

  ただし、浜川氏論文は続けて
 「1895年までに日本で発行された台湾に関する地図・海図の類は、例外なく台湾の範囲を彭佳嶼までとしていた」
と指摘し、
 「地図や海図で公認された台湾附属島嶼に尖閣諸島が含まれないことは、日清双方が認識していた」
と指摘している。
 人民日報の論説は、この部分を無視した。

  浜川氏論文はさらに、中国が尖閣諸島について領有権を「初めて」主張した当時の1971年12月30日の北京放送(中国国際放送)を取り上げた。
 同放送は
 「甲午戦争(日清戦争)で清朝政府の敗北が確定的になったときに、これらの島嶼をかすめとった。
 つづいて、……『馬関条約』を締結させ、『台湾とそのすべての附属島嶼』及び澎湖列島を日本に割譲させた」
と主張。
 浜川氏論文は、
 「日本は馬関条約(下関条約)により、台湾に付属する島として釣魚島(尖閣諸島)を奪った」
とする、71年当時の中国国営・北京放送の表明と現在の中国の主張の間にある矛盾を指摘した。

  人民日報の論説は、これまでの中国の言い方と同様に、
 「明代などに中国の文献に記載がある」
などの理由で、尖閣諸島が台湾に属する島であるとの主張を繰り返した。
 ただし、日本が「無主地」として尖閣諸島の領有と実効支配を開始してから1971年まで中国政府が「沈黙」を守ったことには他の中国側主張と同様に、触れていない。

  論説は沖縄について、日本が「沖縄処分」を実施するまでは「琉球王国はひとつの独立国家だった」と主張した上で、明朝時代から皇帝の柵封を受けているとして「明清時期には中国の藩属国だった」と主張した。
 「独立国」であり、同時に「藩属国」と論じるなど、不可解な論法だ。

  論説は沖縄の帰属について、日本と清国にさまざまな交渉やかけひきがあったことに触れた上で、
 「釣魚島列島の沖縄県編入と、日本が琉球の強奪を完成させ、さらに1歩進んで台湾に駒を進めたことは、関連している」、
 下関条約締結当時の清国政府は
 「琉球について改めて提議する力がなく、台湾と釣魚島諸島を含む台湾に付属する諸島、澎湖列島、琉球は日本に奪い取られた
と主張。

  論説は最後の部分で、沖縄について
 「歴史上の懸案であり、未解決の問題。改めて議論する時期が来た」
と訴えた。

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◆解説◆

  中国では他国との意見の対立が発生した場合、相手国で発表された自国側に有利な意見表明を
 「本来ならば、わが方と対立するはずの相手国内で、中国側の主張を支持する声が出ている」
といったニュアンスで宣伝する場合が多い。
 同様の論法は、北朝鮮も多用している。

  しかし、浜川氏論文の引用では、論文自体に中国側の主張を支持する部分がないにもかかわらず、「自説の論拠」とする強引さが目立つ。

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  琉球については、日本人を含め、多くの人が「かつては独立王国だった」と認めている。
 琉球17世紀から事実上、日本(薩摩藩)と中国の「両属」になった。
 明治政府は1872年から1879年にかけて、琉球諸島の施政を委任してきた中山王府を廃し、県を置いた。
 いわゆる「琉球処分」だ。

  辛亥革命により成立した中華民国政府も、1949年に成立した中華人民共和国政府も沖縄を「日本領」と正式に認める文書を残している。
 人民日報の上記論説は中国の政権党である共産党の機関紙であるにもかかわらず、自国がすでに認めている沖縄の所属問題を、改めて“蒸し返した”ことになる。

  明治時代における沖縄の日本帰属について、沖縄の人々の気持ちをどれだけ反映したかという問題は残る。
 その後の、特に第二次世界大戦における地上戦や、戦後の米軍基地問題を考えても、沖縄が日本にとっての「苦難と負債の引き受け手」でありつづけたことは明らかだ。
 沖縄決戦での玉砕に直面し、海軍沖縄陣地司令官の大田実中将は「県民に対し後世格別のご高配を賜らんことを」と大本営宛に打電した。

  「格別のご高配」という大田中将の訴えにもかかわらず、沖縄の苦難はまだ続いていると言わざるをえない。
 一方では、「基地経済」などへの依存度が大きいという現実もある。
 沖縄における日本政府に対する複雑な感情には十分に理由がある。
 しかし、日本において沖縄内外で世論に差があるとしても、中国側は「沖縄の帰属問題」について口を挟む立場にはないはずだ。

  最近になり、中国では「沖縄の帰属問題」に触れる論調が増えている。
 中国において特定の論調が活発になる場合、共産党上層部――少なくともあるグループ――の意向が関係していると考えてよい。

  現実的に考えれば、沖縄の「中国返還」はありえない。
 中国側も分っているはずだ。
 とすれば中国は、尖閣諸島の問題に絡めて、
 「日本や米国に圧力をかけるために、実現の可否とは別に、考えられる限りの主張をしておく」手法として
 「沖縄の帰属問題」に言及している可能性がある。

  ただしここで問題になるのは、中国の周辺では多くの国が、近代化以前には「柵封体制」に組み込まれていたことだ。
 中国が
 「沖縄は中国の“属国”だった。日本が奪い取った」
と主張すれば、ベトナム、北朝鮮、韓国なども「本来は中国領」という論理が適用されることになる。

  中国が改めて、ベトナムや北朝鮮、韓国、モンゴル国については「独立国として平等な関係と主張しても
 「そもそもは中国の一部だったが、独立を認めた」
と、“上から目線”で
 「やむをえず独立を認めた」
という理屈になる。
 周辺国の人々が、改めて「中国の本音を警戒」することになりかねない。

  東アジア以外の国の人々についても、中国の「自国と周辺地域」に対する歴史観に接すれば、「帝国主義・植民地主義の悠久なる歴史を持ちつづけてきた国」と改めて認識する場合もあるだろう。

  さらに、中国にとってかつては冊封の対象かそれに近い関係で、現在は中国領であるチベットや新疆ウイグル自治区などの漢族以外の諸民族の人々の間で、
 「本来ならば中国領でなくてすんだはず」
との気持ちが高まる可能性すらある。

  中国当局はこのところ、日本が尖閣諸島などについて自国の立場を強く主張すると
 「大きな石を持ち上げた。自分の足にその石を落とすことになる」
などと批判することが多い。

  沖縄の帰属問題をことさらに取り上げることは、中国にとって
 「自ら大きな石を持ち上げる」
ことにつながりかねない。



レコードチャイナ 配信日時:2013年5月8日 23時44分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=72107&type=0

<尖閣問題>
「沖縄の帰属問題、再議論が可能」、
人民日報が専門家論文掲載で主張―中国

 2013年5月8日、財新網によると、中国・人民日報は同日付紙面で、中国社会科学院の専門家2人よる尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題の歴史的検証記事を掲載し、
 「尖閣を含む台湾とそれに属する島しょ部は中国に回帰すべきであり、歴史上結論の出ていない沖縄(の帰属)問題も再び議論が可能だ」
とした。

 記事は社会科学院の張海鵬(ジャン・ハイペン)、李国強(リー・グオチャン)の両氏が執筆。
 1895年に行われた日本の水野弁理と李経方(リー・ジンファン)全権委員の会談で、
 水野氏が「日本政府は台湾に属する島しょ部を認めているため、台湾の公文書に釣魚島について触れる必要がない」
と発言したことを指摘。
 このことから、釣魚島は海図・地図上中国に属することがすでに公になっていたため、日本政府は実質上台湾に属することを認めていたとした。

 さらに、両氏は会談で、日本政府が下関条約締結の3カ月前、釣魚島を秘密裏に沖縄県に編入されたことに言及したと主張。
 日本政府はこの事実を隠し続け、1952年の外交文書で初めて明らかにしたため、清政府や国際社会は気付かなかったと指摘した。


 外交的には下手なやりかたである。
 沖縄を自国領だと主張すれば、話が滑稽になり、と同時に日本国内にアンチ・チャイナが充満して、尖閣問題の解決がほとんど遠のくことになる。
 というより、
 日本は絶対に尖閣は離さない、
 なぜなら尖閣を離せば、今の中国では今度は沖縄をよこせと言うに決まっている。
 沖縄を守るためにも、絶対に尖閣を手放してはならない。
 尖閣は死守すべきである。
ということになる。
 「日本や米国に圧力をかけるために、実現の可否とは別に、考えられる限りの主張をしておく」手法として 「沖縄の帰属問題」に言及している可能性がある」
としても、やり方が下手で、相手をやたらに硬化させるだけである。
 ただただことを大掛かりにして解決を遠のかせるという
 「アジア最強のトラブルメーカー手法」 
の醜さである。

 政治そのものの論拠としてはくだらないものであるが、民族主義に火をつける。
 「日本は中国が沖縄を狙っている」と認識して、
 「沖縄を守れ」
 「中国の覇権主義反対」
といった高揚に繋がっていく。
 中国としては
 「日本は中国に沖縄を返せ」
というナショナリズムが火を吹く。
 もはやこの二国には蜜月になりうる要因はなくなりつつある。
 尖閣が中国にとって「核心的利益」なら、沖縄は「準核心的利益」とみなされると日本人は思う。
 核心的利益とは軍事力をもってしても奪取するものであるなら、「準」とはそれに準じた行動に訴えるものである、ということにもなりかねない。
 中国は周辺諸国にトラブルをまき散らしている。
 中国はアジアのトラブル生産国である。


レコードチャイナ 配信日時:2013年5月9日 16時3分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=72133&type=0

<中国気になる話>
沖縄の日本帰属は未確定と人民日報、その狙いとは―中国

 2013年5月8日、ニュースサイト「KINBRICKS NOW」は、人民日報が「沖縄の日本帰属は未確定」との趣旨の論文を掲載したことを取り上げた。

 8日、人民日報は「“馬関条約”と釣魚島問題を論ず」を題した論文を掲載した。
 中国社会科学院の張海鵬(ジャン・ハイポン)氏、李国強(リー・グオチアン)氏による共同執筆。
論文は
「(1)馬関条約及びその第二項」
「(2)釣魚島ははるか以前から中国台湾の付属島しょだった」
「(3)釣魚島と日清戦争及び“沖縄処分”」
の3章構成で、第1章、第2章は尖閣諸島の帰属について中国政府の公的見解を解説する内容となっている。

 注目を集めたのが第3章だ。
 琉球の帰属について明治政府と清朝の交渉があったことを説明し、以下のように結論づけている。

 “
 「馬関条約」調印後、清朝政府は琉球について再び取りざたする力を失った。
 台湾及び付属島しょ(尖閣諸島を含む)、澎湖諸島、琉球は日本に奪われた。
 しかし1941年に中国政府は日本に宣戦布告し、馬関条約を破棄している。
 後のカイロ宣言、ポツダム宣言が戦後における日本に対する措置を定め、日本天皇はこれを受け入れた。
 この規定に従えば、台湾及びその付属島しょ(尖閣諸島を含む)、澎湖諸島が中国に帰属するのみならず、歴史的にまだ帰属が定まっていない琉球問題も再び議題にしうる時期を迎えた。


 沖縄の日本帰属は未決だとの主張であり、沖縄が中国領だとの主張ではないが、中国のポータルサイトが「釣魚島奪還だけではなく琉球もまた議論できる」とのタイトルで報じたことにより、中国では「中国政府は沖縄の領有権も主張するのか」と“誤読”した人々が少なくない。
 ネットの書き込みを見ると、
 「沖縄を独立させろ」
 「取り戻せ」
といった意見ばかりではなく、あまりに無理な話だと中国政府に批判的な意見もある。

 また、こうしたネットの盛り上がりに対し、同論文の作者の一人、李国強氏は
 「歴史的な視点から分析すれば、琉球の帰属は決まっていないということを訴えたもの。
 ましてや尖閣(の日本領有)などは主張できない」
という趣旨だったと解説している。

 今年3月、日本衆議院外務委員会で民主党の山口壮議員は、昨年8月に中国の傅瑩(フー・イン)外交部副部長(当時)と尖閣問題について協議した際、沖縄についての言及があったことを明かしている。
 人民日報論文も同じ問題であり、
 「尖閣問題に固執するようならば沖縄の帰属も国際問題化する」
という脅しめいたロジックが浮かび上がる。
(筆者:chinanews)

■中国在住経験を持つ翻訳者Chinanews氏は、ニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。ネットの流行から社会事情、事件、スポーツ、芸能など中国関連のトピックを幅広く紹介している。




【「悪代官への怒り」】




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