2013年5月9日木曜日

「超圧縮成長」の終焉:ゆっくりゆっくり沈みゆく中国経済






JB Press 2013.05.09(木)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37731

中国不動産市場:イタチごっこ
住宅価格の上昇が中国の指導者に政治的問題を与え続けている。
(英エコノミスト誌 2013年5月4日号)


 中国の庶民を相手に自分の
 「チャイニーズドリーム」は何か
と尋ねたら、マイホームを持つという回答が上位に来るだろう。
 しかし長年にわたり不動産が値上がりし続けたせいで、その夢は多くの市民の手に届かないものとなった。

 景気減速により、多少熱が冷めたように見えた。
 ところが今、住宅用不動産市場が再び高騰している(上図参照)。

 5月2日に発表されたデベロッパーと不動産会社を対象とした最新調査では、4月の平均住宅価格が前年同月比で5%値上がりしていた。

 長期的に見れば、不動産価格の上昇は正当化できるように思える。

 中国は人類史上最大の都市化の波を経験しており、新たに誕生するすべての都市住民のために住宅を建設する必要がある。
 既存の住宅はお粗末なため、買い手は余裕ができるや否やモダンな住宅にレベルアップする。

 地方政府はデベロッパーへの土地売却から多額の利益を得ており
 投資家は不動産以外に資金を預けておく先がほとんどない。
 こうした事情は皆、不動産価格の上昇圧力が消えないことを示唆している。

■ファンダメンタルズから乖離する市場

 だが、コンサルティング会社IHSのアリステア・ソーントン氏いわく、たとえこうした長期的な前提と認めたとしても、
 市場は現在、ますますファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から乖離しつつあるように見えるという。
 というのも、投資先を探している投機筋が、住まいを求めている住宅購入者を圧倒しているからだ。

 大勢の見込み客が手頃な住宅を必死に探しているにもかかわらず、空室のままのマンションがたくさんある。
 調査会社キャピタル・エコノミクスは、住宅用不動産への投資は2012年の中国の国内総生産(GDP)の8.8%を占めたと試算している。

■思いも寄らぬ場所で警鐘が鳴らされている

 中国最大のデベロッパー、万科のカリスマ経営者である王石氏は、不動産価格がさらに上昇すれば大半の人より得るものが大きいように見えるが、同氏もまた
 迫り来る「惨事」
について警告している。

 王氏は米国のテレビ番組「60ミニッツ」で、
 このバブルが弾けて不動産価格が急落すれば、最近のアラブの民衆蜂起と同規模の
 大衆抗議運動が起きる
かもしれないと断言した。

 中国の新指導部は、そのような懸念に痛く共鳴しており、危機を回避しようと躍起になっている。

■対策に動く中央政府だが・・・

 国を支配する国務院と中国中央銀行はここ数週間で、市場を冷まし、投機を規制することを目的とした対策を数々打ち出した。
 2軒目の住宅を購入する者に対し、頭金の割合とローン金利を引き上げたほか、地方政府には、2軒目の住宅売却に20%のキャピタルゲイン税を課すことを改めて通達した。

 しかし、中央政府の通達の多くが無視されている。
 例えば、不動産の転売にかかるキャピタルゲイン税は、これまでごく稀にしか課税されていない。
 不動産大手の華遠の任志強董事長は先日、国の政策を非難した。
 任氏いわく、中央政府が地方政府に送っているメッセージは次のように表現できるという。

 「我々は不動産が値上がりし続けることがないよう願っている。
 君たちが問題を解決せよ。
 そうしなければ、我々が君たちを罰する」


 大方の地方官僚は、そうした抑制策を厳然と実施する気はない。
 それどころか、不動産ブームを後押しした方が、大いに必要な税収の流れを保つことができ、自身の昇進のチャンスがかかっている地域経済の成長率を膨らませられるのだ。

 このインセンティブの狂いが、
 「地方政府と中央政府が常にイタチごっこをしている」理由を説明するとソーントン氏は述べている。

 この混乱を収拾することは難しいが、不可能ではない。
 まずは住宅の市場価値を基準とし、年に1度課せられる固定資産税を導入することから始めるといいだろう。

 固定資産税の導入により、投機を減らすことができ、住宅所有者に空き部屋を保有する気を失わせ、資金繰りに苦しむ地方政府に新たな資金源を提供することができる。
 そうすれば、共産党上層部へ出世する道筋が管轄区を(そして場合によっては自分自身も)豊かにする能力と結び付けられている地方官僚を安心させられるはずだ。

 共産党が固持する歪んだインセンティブと投機的売買を抑制する政策の欠如は、多くの場合、マイホームの入手を願う夢を打ち砕く結果となっている。
 この問題の解決は恐らく、中央政府が地方官僚にも夢があるということを理解するところから始まるのだろう。

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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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ロイター 2013年 05月 8日 13:58 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE94702S20130508?feedType=RSS&feedName=topNews&pageNumber=1&virtualBrandChannel=0

中国地方政府が民間企業救済、「隠れ」債務のリスク露呈

 5月8日、中国の地方政府が公的資金を使って民間企業の債務を事実上、肩代わりしていたことが判明したことで、
 地方政府の債務に関する推定値が正確なのか、あらためて疑問視されている。

[上海 8日 ロイター]  
 中国の地方政府が公的資金を使って民間企業の債務を事実上、肩代わりしていたことが判明したことで、
 地方政府の債務に関する推定値が正確なのか、あらためて疑問視されている。

 地方政府による民間企業救済は初めてではない。
 ただ今回のケースでは地方政府が民間企業の債務を正式に保証していた。
 地方政府の隠れたコミットメントがどの程度なのか見えにくいことが浮き彫りになった。

 地方政府の債務がもたらす可能性のあるシステミックリスクへの対応は、習近平・国家主席にとって、主な優先事項の1つと見られている。

 地方政府による債務保証が、地方政府の債務に関する推定値への上振れリスクになるか、との質問に対して、クレディ・スイスのチーフエコノミスト(日本除くアジア経済専門)、ドン・タオ氏は
 「イエスだ。ただし、(どの程度上振れるのか)数値化することは難しい」
と述べた。

 CITICトラストが先月末に発表したところによると、湖北省のある鋼板メーカーに対する13億元(約2億1087万ドル)のローンについて、ある匿名筋が買い取ることで合意した。
 CITICは、このローンを「理財商品」と呼ばれる金融商品にパッケージ化、想定利回り10%で富裕層の投資家に販売していた。
 この匿名筋がローンを買い取ることによって、こうした投資家らには全額が返済されることになる。

 政府系メディアの報道によると、この「匿名筋」の買い手とは、湖北省宜昌市政府だったもようだ。
 CITICトラストの幹部は以前、ロイターに対して、市政府が介入して債務を返済する見通しと話していた。

■<表面化している地方債務は氷山の一角か>

 トラストローンなどのシャドーバンキングは近年、中国で急拡大。
 銀行はオンバランスシートのリスク縮小に動く一方、伝統的な預金に代わる資金の振り向け先として、高利回りの理財商品は人気を集めている。

 トラストローンの大半は、地方政府に流れている。
 地方政府は、調達した資金をインフラプロジェクトへの支払いに充てている、とされる。

 地方政府の債務に関する推定値はまちまちだ。
 スタンダード・チャータードが2012年末時点で国内総生産(GDP)の15%と推定しているほか、
 クレディ・スイスは36%、
 フィッチは25%と見ている。

 しかし、今回の湖北省のケースで、地方政府が相当規模の企業債務を事実上負っていることが判明した。
 地方政府の債務に関するアナリストの推定値には、担保提供やその他の形式での信用保証といった、
 状況次第で肩代わりを迫られる債務は含まれていない。
 中央政府は2012年末、地方政府による企業債務の保証を禁止したが、禁止される前に付けられた保証が、まだどのくらい残っているのかは、誰にも分からない。

(Gabriel Wildau記者;翻訳 吉川彩;編集 内田慎一)


 経済成長優先という「中国式、超圧縮成長」は多くの歪をもたらしている。
 急成長時はいいが、成長はいつか緩くなる。
 そのとき、その歪が影から形になって浮き出てくる。
 中国はじわじわとその過程にはいりつつある。
 客観的にみて、もはや中国の急成長は望めない。
 急成長時は経済知識がなくてもやっていかれる。
 しかし、それが止まったとき、
 資本主義のキャリアのない中国はどうずべきかわからず途方にくれるしかない。
 それは「いま、そこにある危機」になる。
 急拵えで作った経済には、緊急時の対応が抜けている。
 形だけ整え、腐食対策が抜けているのだ。
 「とりあえず作れ、」
といった指令で時間をはしょって作り上げたゆえに外見はそこそこだが、内部を熟視する対策が講じられていない。
 中国という巨艦がじわじわと内部腐食をおこしはじめている。
 自然的にも、社会的にも、この腐食が中国の息の根を止めるかもしれない。
 当局は必死に巨艦を守るだろう。
 だが小回りの効かなくなった巨艦の動きは止めることができず、
 その巨艦がゆえの自からの器量とう特色がゆえに、
 自力で沈んでいくことになるだろう。




【「悪代官への怒り」】




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